~アウト老エンジニアのたわごと~
食品に電気を流すと聞くと、「え、それって感電しないの!?」と身を引く方もいるかもしれません。大丈夫です。私たちが扱うのは、スマホに流れる電流の100億分の1という、とてつもなく小さな電流。言ってみれば「電気のささやき」くらいの存在です。
この小さな電流を食材に与えると、細胞が元気になり、酸化も防げる。これが私たちの DEPAK技術です。特に肉や魚などは、鮮度が長持ちしてドリップ(旨みの流出)も抑えられる。つまり、仕入れた食材をより良い状態でお客様に提供できるというわけです。飲食店オーナーの皆さんなら「廃棄が減る=ロスコスト削減」にもピンと来るかもしれません。
ただ、この技術には厄介な課題がありました。家電のようにコードで流すのではなく、空気を介して食品に届く電気なので、目で見えないし測定も難しい。技術者からすると「幽霊のような電気」を扱っている気分でした。
「見えないものをどうやって調整する?」――実験を繰り返そうにも、条件を変えるたびに結果はバラバラ。形や電圧、周囲の環境によって、食材に流れる電流は激変します。パターンは何十、何百通り。もう迷宮です。
そこで私は、40年前の自分の経験を思い出しました。若いころに没頭した「コンピューターによる電磁場解析」。これを使えば見えない電気をシミュレーションできるのでは? そう考えたのです。サビだらけの知識を引っ張り出すのは気が引けましたが、思い切って再挑戦しました。
驚いたことに、この40年でコンピューターは大進化。かつて大型機で数日がかりだった計算が、今やノートPCで数秒。しかも結果はグラフィック表示。40年前の私に言ってやりたい。「そのうち電磁場解析が電卓感覚でできるようになるぞ」と。
こうして私は再びコンピューターに夢中になり、さまざまな解析を実施。新製品 Add-On DEPAK の構造は、こうした積み重ねから生まれました。
思い返せば若い頃、シミュレーションにのめり込んでいると先輩から「コンピューターで遊ぶな、実験しろ!」と叱られたものです。でも今は胸を張って言えます。「先輩、遊んでおいて正解でした!」と。
見えない電気を操る技術は、ただの技術者の自己満足ではありません。飲食店にとっては食材の持ち味を守り、廃棄を減らし、利益を守る。そしてお客様にとっては**「おいしさが長持ちする」喜び**につながるのです。 アウト老エンジニアのたわごと、今回はこのへんで。次回は、「年を重ねるのも悪くはない。」という小話をお聞かせしたいと思います。


関連ページ: https://www.depak.jp/technology/depak

~アウト老エンジニアのたわごと~
こんにちは。サンテツ技研の“アウト老エンジニア”です。
みうらじゅんさんのファンでもある私は、還暦をとうに過ぎた今、“はみ出し老人”を目指して、日夜(?)技術開発と取っ組み合っています。
思いどおりになんていかない。でも、それがまた楽しいんです。
そんな“迷走気味の開発ライフ”の裏側を、ちょっとだけお見せしたいと思います。