「恋は盲目」と言うことは皆さんよくご存じでしょう。夢中になるあまり正常な判断力を失うというあれです。
若いころの私も若気の至りで良くやらかしてしまったものです。
しかし、世界には「愛さないと見えないことがある」という言葉もあることを御存じですか?
——これは、ドイツの哲学者マックス・シェーラーの言葉です。
技術や商品開発の世界に置き換えると、これはこういう意味だと思います。
開発者が技術・素材・ユーザーを本当に「愛する」視点を持つと、単なるスペックや機能を超えた“隠れた価値”を発見できる、ということです。
私自身、depakという技術に携わって7年、このことを実感した瞬間がありました。
たとえば、冷蔵庫に後付けできるAdd-on depakの試作品を、神戸のレストランのオーナーシェフに試してもらったときのことです。彼らは技術者ではないのに、どの食材にどんな電場条件をかけると最も効果が出るかを、まるで理屈を理解しているがごとく語りだすのでした。
一度、電場の条件を3種類に設定し、どれが一番おいしいかを試してもらいました。すると、大学の先生が細胞実験で導き出した「細胞活性化の最適条件」と同じ設定を、シェフは見事に選び当てたのです。
彼らはdepak技術について知識があるわけではありません。それでも、その変化を鋭敏に感じ取れたのはなぜでしょうか。
——おそらく、彼らが食材を、そして料理を心から愛しているからだと私は直感的に思ったのです。愛があるからこそ、私たち技術者でさえ気づけない繊細な変化を感じ取ることができると。もちろん技術の効果は実験できちんと確認しなければなりません。しかし最初から、その技術を疑ってかかると観察に心理的なバイアスがかかり、大切な何かを見落としてしまうように感じました。そのことを一流のシェフたちは身をもって教えてくれたような気がしたのです。
技術も料理も、愛(と少しの電場)が決め手、ということかもしれません。

次回は世界を変えると言われているAIについて、どう付き合っていったらよいかお話してみたいと思います。
お楽しみに。

~アウト老エンジニアのたわごと~
こんにちは。株式会社デパックの“アウト老エンジニア”です。
みうらじゅんさんのファンでもある私は、還暦をとうに過ぎた今、“はみ出し老人”を目指して、日夜(?)技術開発と取っ組み合っています。
思いどおりになんていかない。でも、それがまた楽しいんです。
そんな“迷走気味の開発ライフ”の裏側を、ちょっとだけお見せしたいと思います。